前回の英語の話の続き。2009年くらいにうつになった僕は病院の主治医から病状回復の為にゆっくり休みなさいとアドバイスを受けた。
ところが実際は、前回の記事にも書いたが、休むどころか個人的には毎日英語漬けの日々であった。テキストも辞書も全部英語、新聞もテレビも全てである。しまいには母親との会話も英語になってしまった。まさにどこかの軍隊の語学研修みたいな日々であり、月月火水木金金の猛訓練だ。この方法は下手な英会話教室に通うより確実に伸びる。誰か真似をしてみてください。
そんな折、何かの用事で東京に行くことになった。ただ、東京に行くだけでは面白くない、何かのごっこ遊びを楽しんでみようと思った。そこで、思いついたのが、アジアの某国から来た留学生という身分を隠した諜報員を演じてみるという試みである。だから個人的にはこの活動をエスピオナージespionage 諜報活動と呼んでいる。調査目的は機密扱いである。あんまり過激に書くと間違って公安に目を付けられるといけないので・・・。
新幹線で向かったのだが車内では臨場感を出すために徐々に英語で思考して、英字新聞を読むように切り替えていった。携帯電話の設定もipodの設定も全部英語だ。新幹線にて、品川駅あたりで完全に英語脳に切り替わるように仕掛けておいたので、当駅を通過後はまさにその通りとなった。車内アナウンスも英語のみが理解されていた(日本語も理解できるけどなんというか・・・)。今でも、新幹線で品川を通過すると無意識に英語脳に切り替わる。これが自己洗脳というやつだ。
東京駅到着後に、目標地点新宿に行くためにもちろん英語のガイドブックを使用したりして、目の前の外国人に新宿にはどう行けばいいのかを聞いてみたりした。英語圏の人だと思ったら、英語の通じるドイツ人だった。セーフ。
新宿で宿泊するホテルにチェックインした。一応、宿泊者名簿は日本人斎藤貴志だったので、そこはそれでやり過ごしたが、あとは全部留学生という設定でやりとおした。エレベーターで親切に行先階を押してくれたホテルマンに「Thank you」と言ってやり過ごしたり、カッコつけてフロントにWSJ(ウオールストリートジャーナル)はないですかとか聞いたりしていた。もちろん、部屋でのテレビも臨場感を出すためにCNNだ。
(後年、リッツカールトン大阪で英字新聞をもって歩いていたらGood morning Sir!と元気よくスタッフに挨拶をされるが、「あの日本人です」と普通に冷静に返事をしたらそこの淑女は怪訝な顔をしていた。あの時も、某国から来た留学生を演じてあげればよかった・・・)。
その後、都内を周り初めていく場所も多かったが英語の情報だけで到着できた。というよりは、英語の情報しか映らなくなってしまっていた。人間の脳はそこに臨場感を感じるとほんとにその通りになるように出来ている。コーチングで現状よりもゴール側に強い臨場感を感じると、気が付いたらそっち側に移行していたと同じ原理(I×V=R 想像×臨場感=現実)だ。おそるべし、人間のマインド。
そう言った意味で、某国の留学生(という身分の諜報員)は日本の首都東京への潜入に成功したのだ。
帰りのやくも(在来線の特急 岡山~出雲間を結ぶ)では困っているフランス人を助けた。米子に行きたいけど、英語の案内も表記も何もないので本当に乗っていいのかどうかホームで迷っていたこの方を助けてあげた。
無事、任務を終えて帰途についた僕は、後年本当に某国の船員と一緒に仕事をするようになり彼らを支援することとなった。この経験が多少は役に立ったのかもしれない。