あなたは神経質で困っていませんか?
もし困っているのならば、以下のことが当てはまると思います。
・自分でもバカバカしいと思うけど、細かい些細なことが気になる
・人の言動や態度を気にし過ぎる
・周囲の目が気になる
などです。
これらのことに注意を払い過ぎるあまりエネルギーを浪費してしまいます。
その結果、疲れてしまって、お家に帰ったらバタンキューではないのでしょうか。
このサイクルを繰り返してしまうと人生が辛いものになります。
事実、私も他人よりも疲れやすい体質でした。
しかし、今思えば原因は気疲れでした。気疲れとはまさにエネルギーの浪費です。
なぜ、気疲れをしたのかというと、それは些細なことが気になったからです。
やがてはこれが度を過ぎて、神経症と診断されました。
神経症とは病気まではいかないまでも、日常生活に支障が生じるレベルの状態です。
日常生活に支障が出るレベルゆえに、人生が辛かった記憶があります。
ではなぜ細かいことが気になるのでしょうか?
それは脳の情報処理過多から引き起こされます。
以下は専門的な説明なので、難しいと思えば読み飛ばして大丈夫です。
神経質な状態は大脳辺縁系と呼ばれる部位が過剰に活動しています。
大脳辺縁系とは主に嬉しい・楽しいというプラスの感情や、悲しい、イライラ、不安などの感情を生み出します。
大脳辺縁系は扁桃体、海馬、前帯状皮質、帯状回、尾状核などからなります。
海馬
海馬は記憶に取り込む情報を選びます。
この、この選ばれた情報が側頭葉にまで届けば長期記憶になります。とくに失敗の記憶は海馬の選別を超えて長期記憶になりやすい。
また海馬は長期記憶をつかさどる側頭葉から記憶を引っ張り出す時にスクリーニングを果たす。
扁桃体
扁桃体は海馬の記憶を強めたり、弱めたりします。
ダムの放水員が海馬であれば、それを指揮する人が扁桃体です。
扁桃体が『放水バルブを一杯!』と号令を出せば、海馬は『アイサー』と放水量を増します。
神経質になるのは強烈な失敗が引き起こすと考えます。
例えば、ある男性は、高校生の頃にモテたいがために香水を付けようと試みたそうです。
しかし、香水をつけるのが裏目にでて、女子生徒から『あの人くさい』と言われたらしいです。
ご本人にとっては、かなりショッキングな出来事のようでした。
ショッキングだったゆえに、海馬はある意味重要な情報だと判断して、その後、長期記憶化したのでしょう。かつ扁桃体がその情報(ショック)を強化しました。
一種のトラウマです。
通常であれば、扁桃体は命に別状がないと判断すると海馬の情報処理を弱めます。だんだんとショックや不安のレベルが低下して、元の正常な状態に戻ります。
しかし、正常に戻る前に前頭前野とネットワークを結んでしまうと厄介なことになります。
前頭前野と扁桃体と海馬のネットワークが『ものの見方や考え方、世界に対する認識』をつくります。これをもとに、人は未来を予期したり予想をしたりして、あらゆる行動と選択をします。
その男性は、女の子にくさいと言われてショックを受けて、一方でそんなことはないという考えがあったようです。しかし、打ち消しても打ち消しても、アタマでは分かっているけど、気になったそうです。
なぜならば大脳辺縁系と前頭前野のネットワークが形成されたからです。
こうなるとやがて、『僕は周囲から嫌われているのではないか』と不安になります。
冷静に考えれば誰でも好かれることはあるし、嫌われることもあります。しかし多感な少年には一大事件です。不安ゆえに世界中から拒絶されたような感じになります。
ココロの奥底に澱のように沈んだ不安を打ち消すために、日常の一挙一投足が過敏になり、やがて神経質へと繋がります。
帯状回
さらに詳細に述べると、大脳辺縁系の帯状回という部位も関係してきます。ここは大脳辺縁系の各部位を結びつける役割を担います。感情の形成と処理、学習と記憶に関わるセクションです。ここがおかしくなると、手を洗うのが止められないとか、ドアノブをキチンと閉めたのかが気になります。
尾状核
尾状核は線条体という部位に含まれます。尾状核の抽象度を一段上げると線条体になります。線条体は複雑で後に述べる眼窩前頭前野、扁桃体などから多量の信号を受け取る情報の中央管理センターです。情報処理がパンクすると、理性で分かっているけど、不安な情動が取れない状態になります。
眼窩前頭前野
眼窩前頭前野は前頭前野の一部です。大脳辺縁系とも繋がっています。眼窩前頭前野で感情と思考の連携が行われます。何が正しくて、間違っているのか、近づくべきか、逃げるべきかを判断します。意思決定を及ぼす部位であり、ここがが過剰に働き過ぎると理性に異常が生じます。缶詰をアルファベット順に並べたり、コーヒーメーカーがつけっぱなしでないかと確認したりせずにはいられなくなります。
このように大脳辺縁系(海馬、帯状回、尾状核)の情報処理が過剰になり過ぎて神経質になります。さらに、この状態で前頭前野とネットワークを形成すると『神経質なものの見方や考え方』、いわゆる神経質な人格へと繋がります。
対処方法
では、この流れを断ち切る方法はないのでしょうか?
それが抽象度を上げることです。
抽象度を上げるとは前頭前野を働かせること。
実は前頭前野を働かせると、大脳辺縁系の過剰が抑えられます。
尾状核の中にTAN(持続放電型ニューロン)と呼ばれる細胞があります。TANは感情をつかさどる大脳辺縁系と、理性を司る前頭前野の情報伝達の切り替えを行なう転轍機(線路にある)の役割を果たしています。神経質な人は大脳辺縁系優位のまま情報伝達経路が固定されています。ここが固定されると心配や不安がアタマから離れない『グルグル思考モード』になります。
今、マインドフルネスという瞑想法が流行っています。マインドフルネスをすればイライラが落ち着いたり、神経質が良くなったりと喧伝されています。
その理由は、前頭前野を活性化させて、イライラや不安、神経質を引き起こす大脳辺縁系優位の情報処理を鎮めましょうという意味もあります。
もっと言うと、抽象度を上げるとは『ものの見方や考え方』をシンプルにすることです。いわば余計な情報を捨てること。
例えば、仕事で、あるプロジェクトで些細なことでも全員で会議ばかりしているケースを想像してみてください。細かいことまでいちいち気にしていたらメンバーが処理すべき情報量が増大になり、メンバーもヘトヘトになります。それを防ぐためには責任者を立てて、その人に権限を委譲してしまえばいいわけです。
神経質な状態もこれと同じです。目に入るものが何でもかんでも意識に上がって、気になってしまう状態です。これでは情報処理過多でエネルギーを浪費します。否、情報処理過多だからこそ、何でもかんでも気になって神経質になるのです。
だとすれば『処理する情報量を減らせばいい』という答えに落ち着きます。些細なことに対する反応は、無意識の働きに権限移譲してしまえばいいのです。
そのコツは抽象度を上げることにあります。
こうすることで、もっと気を楽にして、楽しく生きていけるようになります。