前回、新しい戦争の形、認知戦について書きました。
認知戦とは、私たちの『ものの見方や考え方』が書き換えてしまいます。
感の鋭い方であるならば、そんなことは『すでに昔からやっているんじゃない?』と疑問をいだくでしょう。
確かに、これまでもラジオやテレビで『ものの見方や考え方』を操作しようとする企みがおこなわれてきました。
たとえば、かつて中東でアメリカとイラクが戦った湾岸戦争がありました。
この戦争で、油にまみれた水鳥の姿がテレビで映し出され、イラク軍の攻撃によって引き起こされたと報道されていました。
写真はイメージです
※実際はアメリカ軍の攻撃の結果、水鳥が油にまみれてしまったということが判明しています
日本でもNHKのニュースで放映されていました。私も小学生だったのでよく覚えています。
日本中で『イラクはけしからん。アメリカにやっつけられて当然』という世論がわきおこってたことを覚えています。
小学生だった私も、イラクは悪い国で、世界の警察であるアメリカが懲らしめていると思っていました。
テレビによる報道により、私の『物の見方と考え方』が(自分では気がつかないうちに)意図的に書き換えられてしまっていたのです。
驚くべきことに、この書き換えは私が大人になった後にも影響します。
2000年代のイラク戦争でも、イラクは大量破壊兵器を隠しもっているに違いないと決めつけていました。結局、イラクからは大量破壊兵器はみつかりませんでした。
他にも、私が体験したエピソードを紹介します。
私は若かりしころに、港に停泊する外国船に書類を受け取りにいったり、積み荷をチェックする仕事をしたりしていました。
中国の船を訪問したときのことです。
船長が交渉用のテーブルの上に、わざと日本人である私にも分かるように漢字で書かれた(中国の)機関誌をひろげていました。
そこには台湾のパトロール船が尖閣諸島で中国の船と攻防を繰り広げている写真が写っていました。
しかし、見出しには日本の軍艦が、中国固有の領土である釣魚群島にやってきて、中国の漁業を妨害しているという嘘が書かれていました。
知識がある人がみれば、これは尖閣諸島ではない台湾近海で、この国のパトロール船が、中国の漁船の操業を妨害している場面だと理解できます。
控えめにいって、日本は関係ありません。
けれども、そのことに関する知識のない中国の人や第三国の人がみれば、残虐で鬼の子である日本の軍艦が善良な中国の漁師を虐げていると解釈するでしょう。
そう感じた人は、日本や日本人に対してネガティブな印象をいだくに違いありません。
そうなると、その後日本が何をしても、たとえば、『なでしこジャパンが中国でキャンプ』みたいなことでも、私がイラクにいだいた印象のように、批判的にみるでしょう(※ただし、羽生結弦は除く)。
これも相手の『ものの見方や考え方』を操作した例です。
一たび、情報を受け取るほうの『ものの見方や考え方』をイラクは悪、日本人は悪というネガティブな方向にむけてしまえば、その後は、イラクや日本が何をしても、情報の受け手はネガティブな行為として解釈します。
※コーチングでいうところのブリーフシステムが書き換わる
脳の構造がそうなっているのです。
これ以降も話が長くなりますので、また次回に