The Sky is the Limit.  マツダの挑戦! 

The Sky is the Limit. マツダの挑戦! 

今回は広島県に本社を置く自動車会社マツダのお話です。

なぜこのテーマを選んだのかと言えば、私はコーチという人の能力を引き延ばす役割を担っています。

コーチは、人間には無限の可能性がある 『The sky is the limit.(無限の可能性)』だと信じ、自分人やクライアントと向き合っています。

ある時、ひょんなことから自動車会社マツダの現場でのモットーが『The sky is the limit.(無限の可能性)』だと知り大変興味を持ちました。

実はマツダは自動車メーカーとしての規模はトヨタや日産に比べて小さく、つい最近まで、あと一歩で経営が続けられなくなるのではないかという窮地に立たされていました。

しかし、自分たちの『The sky is the limit.(無限の可能性)』を信じて新技術を開発、一躍世界から脚光を浴びて反転攻勢を仕掛けています。

新技術を開発するにあたり、多くの人たちからは不可能だと言われ、外国の自動車メーカから馬鹿にされてもマツダは走り続けました。

それは『世界一の車をつくりたい』という、現状を超えたwant toのゴール設定があったからです。

ゴール設定が企業や組織(コーポレート)を、どのように変えていくかを表した絶好の例です。読む進めていくことでゴール設定の凄さが分かります。

併せて動画もご覧ください。

私は広島で働いていた経験があります。広島の会社の社用車は圧倒的にマツダ車が多かったのを覚えています。どこの会社にも少なくとも一台以上はあるのではないでしょうか。

私が個人の車を買っても「えっ、マツダじゃない、広島ではやっぱりマツダじゃけえー」と、お叱りを受けて(笑)自信を持って堂々と語られるこの会社の存在感に驚きを隠せませんでした。

広島の方々のマツダとカープへの愛情は半端ないものがあります。両方とも、ヘマを犯せば容赦ない罵倒が浴びせられます。しかし、それは愛情の裏返しであり、それほど期待が高かいのでしょう。

バブルの崩壊以降、何度もマツダの経営には厳しい局面が訪れました。何度も、経営を続けられないかもしれないという危機に直面しています。

窮地に立たされていたのは、そんなに昔の話ではありません。それが、今では新技術スカイアクティブを開発して、市場にて着実に反転攻勢を仕掛けています。

この復活劇にはコーチング理論と共通する部分が見受けられました。それをひも解いていきたいと思います。

2012年2月、新型車CX-5発表の場。この車は、エンジン、変速機、足回り、車体やデザインなどを新開発、マツダで培われた技術をふんだんに盛り込んだ自信作だった。

その新型車の記者会見にて、当時の社長は「マツダはこの新世代商品の第1弾であるCX-5によって新たな市場を創造いたします。社運をかけております」と高らかに宣言した。

しかし、記者たちの反応は至って冷ややかだった。「新しい市場を創造する?」「冗談じゃない、トヨタや日産ならともかく、市場占有率5%のマツダに何が出来るの」という冷ややかな反応が正直なところだった。

冷ややかな反応には以下の理由も加わっていた。

実は、この新型車種にはデーゼルエンジンを積んだモデルが存在していた。
しかし、ディーゼルエンジンを積んだ乗用車は、国内ではあまり人気がないのが実情で、前年は国産車と輸入車を合わせてやっと9000台に届くという小さな市場。
ディーゼル車が普及しているヨーロッパならともかく、国内の小さな市場で、果たしてCX-5は闘っていけるのかという疑問が記者たちの正直な反応だった。

事実、トヨタや日産の社長がこのような宣言をすれば翌日の新聞の大きな見出しになるが、当時のマツダの社長の発言にはメディアはほとんど反応を示さなかった。「社運を賭けた会見にも関わらず反応されなかった」というよりは、スルーされたというのが実情だろう。

当時のマツダにとってあまりにも現実離れした目標。コーチング理論で言えば、ぶっ飛んだゴール設定となる。

多くの人たちの目は冷ややかだった。ただし、マツダの社員・従業員以外は。

マツダの社員・従業員にとっては文字通り「社運を賭けた」会見の場だった。このCX-5は当時苦労して開発した技術を全てを集めた新型車種の第1号モデルだった。後発の車種は、CX-5と同じ技術を搭載してリリースされる。よって失敗は絶対に許されない。もし、空振りに終わったら計画を練り直すどころか、本当に倒産という状況にあった。

続く

参考文献
宮本喜一著 『ロマンとソロバン』 株式会社プレシデント社 2015年