パイロットの世界には、バーディゴ(空間識失調)という現象があるそうです。
とくに戦闘機パイロットが出くわす確率が高く、戦闘機パイロットであれば、誰でも経験するようです。
戦闘機は旅客機とは違い、宙返りや背面飛行などのアクロバティックな機動を展開します。
このような機動を繰り返しているうちに、とくに夜間飛行の場合、どちらが空で、どちらが陸地か判別不能になるようです。
バーディゴ(空間識失調)に陥っても昼間であれば、目視により空と陸の区別がつき難を逃れられます。
一方で、夜間だと判別が難しく、海の漁火を星と勘違いして、本人は上昇しているつもりが、本当は逆で機体ごと海面に突っ込んでしまう場合もあるようです。
なので、予防法として、陸上での講義においては、バーディゴに陥ったら、飛行計器を見ながら水平に戻せば良いと学ぶそうです。
しかし、机上とは違い実際の飛行においては、自分の感覚の方が正しいと信じてしまい、計器と自分の感との乖離においてパニックに陥ってしまう。
どんなに、ベテランのパイロットでもバーディゴ(空間識失調)からは逃れられません。
コーチングでもバーディゴ(空間識失調)のような感覚に陥る場合があります。
ゴールに向かって無意識が動き出したあたりで経験します。私の場合も、セッションを受けて2回目を過ぎたあたりに経験しました。
とにかく落ち着かないのです。今まで経験したことのない状態なのでとても不安であり、恐怖を覚えて、体が宙を浮いたような嫌な感覚に陥りました。
バーディゴ(空間識失調)のように、ゴールに向かっているのか、現状に留まっているのか自分では分からない状態です。
コーチングが効いて、コンフォートゾーンが移行しようとしている。だけど、ホメオスタシスが機能して、現状維持に留めようと作動します。
コーチにコーチングが効いていないのでは?と、疑問を呈するメールを送った半面、これが突破口にならないかと節に願った経験があります。
実際のところ、コーチングが効いているからそのようなメールを送っているのですが。その理由は、後に説明します。
この時の心理状況は、自分には無理だと思う反面、何とか未来を手にしたいというせめぎ合いでした。
より詳しく説明すると、ゲシュタルトが一時的に宙ぶらりんになった状態です。
ゴール側のゲシュタルト(世界)が鮮明になったので、それまでの過去を起点とした現状と結びついたゲシュタルトが維持できなくなりました。
この時はゲシュタルトが宙ぶらりんの状態で、ゴール側もしくは、現状のどちらかでより臨場感が強い方と統合します。
とても気持ち悪く、不安で恐怖を覚えます。生きた心地がしません。
上のバーディゴ(空間識失調)と重なると思います。
計器を信じれば難を逃れられると同じく、コーチングのセオリーでは、コンフォートゾーンが移行しようとしている証拠。頭では分かっている。
けど、その理論がスコトーマになって見えなくなっています。
戦闘機であれば、一緒に飛ぶ僚機(戦闘機は単独では飛ばない)や管制官からの指示で冷静さを取り戻せます。
同じく、コーチングを受けている人であれば、コーチが同じような役目を担います。
ゲシュタルトが宙ぶらりんになった状態においては、外部からのフィードバックは大切です。
さて、この状態では一刻も早く安定した状態に戻りたく、そのために物凄いエネルギーが生じます。
私もこの時に初めて、コーチにメールを送った記憶があります。自分の無意識がゴール側を正しいと思い、ゴール側の潜在であるコーチにメールを送ったのでしょう。
今振り返っても無我夢中でした。
反対に、現状維持のゲシュタルトが選ばれれば、理由を付けてコーチングを受けるのを止めていたことでしょう。
バーディゴ(空間識失調)は、どんなにベテランパイロットでも陥ると書きました。
同じく、ゲシュタルトが宙ぶらりんになった状態は、どんなにベテランのコーチでも陥ると思います。
本気で取り組み、高いゴールを目指すコーチであればなおさら陥るでしょう。
昨日までは、エフィカシーが高く、絶好調と思える状態であったとしても、何かをキッカケに、この状態に陥れば苦しみを味わいます。
本気で実践すると、楽しいだけではない場合に出くわします。
現状の外側であればあるほど、『逆境』と言う場面にも出くわします。
そこには当然『成長には痛み』も伴います。
それでも、望む未来を『手に入れたい』、それを『選ぶ』し、『好む』という姿勢が大切です。
自分でその道を選んだら、『黙って走る』という姿勢が大切です。
また、こんな時は、同じゴールを目指す仲間の存在が励みになります。
それはコーチかもしれないし、そうでないかもしれません。
その人たちのとの関係が、痛みを和らげ、また前に向って行くキッカケになります。