『元彼のことが忘れられません』『元彼とヨリを戻したいです』『新しい恋に進めません』という相談を受けます。
前の恋愛を引きずるのは男性の専売特許かと思いきや、案外女の子にも案外多いようです。
ではなぜ?前の恋愛、つまり過去のことを引きずってしまうのでしょうか。
合理的に考えれば、新しい恋に進んだ方が一度別れてしまった人との関係を修復したり、過去の思い出に浸ったりするよりも得策であり、気分も明るくなりそうです。
しかし、なぜかそれができない……。
この理由は何なのでしょうか?
その鍵は記憶にありそうです。
と言いますのも、私たちの目の前の世界は大部分は記憶の合成でできているからです。
普通考えると、私たちは五感、とくに目から入った情報をリアルタイムに見て、現実を認識しているように錯覚してしまいがちです。
でも、実はそうではなかった。目から取り込まれた情報は脳の五つある視覚野にバラバラに情報として収められます。
そのバラバラになった情報を視覚野から取り出して再合成して、とくにケータイを見たり、本を読んだり、テレビを見たり、何かにフォーカスしている対象の背景に利用しています。
もっとも本の文字やケータイの画面に関しては重要な情報なのでリアルタリムに情報を更新しています。
そうしないと本は次の行が読めないし、テレビは話に追いつけませんよね。
一方で、背景はあまり重要ではないので情報処理は手を抜いて以前見た記憶を当てはめています。
他にも、動く対象の重要度も高く、リアルタイムで認識します。そうしないと、自分を襲ってくる動物や虫がいたら対処できません。
本やテレビを見ている背景の壁にゴキブリが出現したら重要度が途端に上がり認識します。
反対に、今度は本やテレビが背景になってそれまでの記憶を当てはめます。
少し余談になりますが、具体的な例を説明しましょう。先日私はガソリンスタンドで財布を無くしたと書きました。
記事にも書いたようにガソリンスタンドの機械にお金を支払って、ノズルを取った瞬間に財布の重要度が低下しました。
ガソリンスタンドではガソリンを入れる行為が重要です。
その他は周囲を行きかう動く車や人に対する重要度が高くなります。
つまり、給油口と周囲を動いている車や人以外は、ちょっと前に見たガソリンスタンドの風景を記憶して、それを背景にしてしまったのです。
そうするとどうなるのか?財布を落としたり、どこかに置き忘れたりしても気が付かなくなります。
もっとも財布を落としたことやどこかに置いたことすら覚えていません。
なぜ、このような現象が起こるのかというと繰り返しになりますが、脳は案外横着だということです。
脳が入ってくる情報を全部処理していたらエネルギー不足で、一瞬で死んでしまいます。それを防ぐために手を抜いているのです。
お部屋の掃除の手を抜いてしまうのと同じです(笑)
反対に、初めての場所や体験という刺激を埋めた場合は、その分情報処理にエネルギーを必要とします。
実際に、これらの体験をした時はいつもより疲れます。休んだり、いつもより多めに食べたりしてエネルギーを補給しようとしますよね。
さて、ここで恋愛に話を戻します。
新しい恋も初めての体験と同様に、相当のエネルギーを要します。仮に新しい恋に進んだとしても上手く成就するのか不安がつきまといます。
実はこのことは脳にとっては負担なのです。そして、脳は不安になると、新しい刺激を拒否して、逃げ込もうとする厄介な癖があるのです。
過去の恋愛に浸ってしまう冒頭の『元彼のことが忘れられません』『元彼とヨリを戻したいです』『新しい恋に進めません』の原因はこのメカニズムにあります。
エネルギーに満ちている若い頃は、失恋をしてもまたすぐに立ち上がって次に向かって行きます。
しかし、歳を重ねてエネルギーが枯れてくると、エネルギー保持の観点から、恋愛はしないという選択肢に逃げ込んでしまうのです。
干物女はこうやって生まれます。
なお、こういった過去の記憶に逃げ込もうとする癖を別の言い方で表すとコンフォートゾーンと言います。
新しい恋に進むにはどうしたらいいのか?
方法はいろいろあります。極端なところでは『生きるか死ぬか』という場面において、あなたと一緒にいて、守ってくれる男性に間違いなく恋をしてしまうことでしょう。
もしくは、同じ臨場感(空間)を長時間、あなたが嫌いなタイプではない男性と過ごしてみてください。
次第に気になる異性になっていることでしょう。恋ダンスを一緒に踊ればさらに効果はテキメンです(笑)
または、先に大人の関係になってしまっても恋をしてしまう可能性が高まります。
いずれにせよ、新しい恋に進むには新しい刺激が必要なのです。
『失恋の特効薬は新しい恋をすること』とは言い得て妙ということなのです。