2026-02-20

その「サナ活」は、あなたの意志か。 ——物語にハックされる脳の正体

衆院選の裏側で、私たちの「選択」本当に自分のものだったか

なぜ私たちは”物語”に心を動かされるのか

1. あの夜、あなたは何を感じましたか

2026年2月8日、衆院選の結果が出ました。自民党が316議席を獲得するという圧倒的な大勝

私はその数字を見たとき、素直に「すごい」と思いました。と同時に、もう一人の自分がどこかで問いかけていました。——「この感情、本当に自分のものだろうか」と。

先に書いておくと、私は高市首相には心から頑張ってほしいと思っています。この記事は、誰かを批判したくて書いているわけではありません。それよりも私が気になっているのは、もっと内側のことです。

私たちは、あの選挙戦のなかで、どのように心を動かされたのか。そのプロセスを一緒に見つめてみたいのです。

2. 人は「正しい情報」より「刺さる物語」で動く

政策を比較して、データを読んで、理性的に投票先を決めた——そう思っている方も多いと思います。私もそう思いたい。でも認知科学が教えてくれることは、少し違います。

人間の脳は、複雑な情報処理をするとき、エネルギーを節約しようとします。その結果、統計や制度の細かな比較よりも、因果関係が明快な「物語(ナラティブ)」を優先して受け取る性質があります。これをヒューリスティックといいます。正しさよりも先に、「刺さった物語」が私たちの前提になる。

ここで働くのが、脳の重要性評価関数です。安心や共感と結びついた瞬間、その話題に「重要」というタグが貼られ、RAS(網様体賦活系:脳幹にある情報フィルターで、重要と判断した情報だけを意識に上げる機能)が作動します。RASが一度ある物語を「重要」と判定すると、それを支持する情報ばかりが目に飛び込み、矛盾する情報はノイズとして弾かれるようになります。

こうして生まれるのがスコトーマ(心理的盲点)です。見えていないのではなく、脳が見ないように調整している状態です。

今回の選挙で多くの人の心をつかんだのは、高市首相をめぐるある種の物語でした。既存の権力構造に阻まれながらも、それを突き破って前進していく——そのナラティブがテレビやSNSで繰り返されるうちに、臨場感(その出来事をリアルに体験しているかのような感覚)が高まり、多くの人の関心は政策の中身から「この物語の続きが見たい」という感覚へと、静かにシフトしていきました。

脳は、臨場感の高い世界を「現実」として扱います。繰り返し触れた物語は、やがて自分の内部表現(世界の見え方・感じ方の総体)そのものになっていく。これは高市首相が悪いという話ではありません。物語の力がそれだけ強い、ということです。

3. 夜のスクロールが、じわりと「私の考え」を書き換える

少し、自分のことを振り返ってみてください。

寝る前にスマホを手に取って、SNSをスクロールした夜。感情を揺さぶる動画や投稿を次々と眺めているうちに、気づけば1時間が経っていた——そんな経験はありませんか。

あの状態のとき、脳では何が起きているか。感情を揺さぶる刺激が続くと、論理的な思考を担う前頭前野の働きが落ち、いわゆる「分析モード」が緩んだ状態(変性意識状態)になります。

その瞬間に流れてくる「この人しかいない」「やっぱりこの人だ」という言葉は、他人の意見としてではなく、まるで自分自身の内なる声(セルフトーク:無意識に自分に語りかけている言葉)として、するりと心に定着しやすくなります。

セルフトークは、私たちの内部表現を直接書き換える力を持っています。繰り返し耳にした言葉が自分のセルフトークになった瞬間、それはもはや「誰かの意見」ではなく「自分の現実」として脳に処理されます。ホメオスタシス(恒常性:脳が「いつもの自分」を維持しようとする機能)が働き、その新しいセルフトークに沿った行動や判断が「自然なこと」として選ばれるようになっていく。

翌朝、自分の意見として語っているその言葉。もしかしたら、誰かが設計した言葉を無意識に復唱しているだけかもしれない。私はそう思うと、少し怖くなります。

4. 発信者も、実は「伸びる型」に操られている

ここで少し視点を変えてみましょう。

SNSで政治的なコンテンツを発信している人たちは、自分の信念を語っているのでしょうか。もちろんそういう人もいます。でも多くの場合、再生回数・いいね・収益というデータが、発信の内容を静かに「最適化」していきます。

伸びるのは、強い断定。敵と味方の単純化。そして救世主の演出。

発信者は信念に従って発信しているのではなく、「伸びる型」に従って発信するようになっていく。これは発信者の悪意というより、プラットフォームの構造が生み出す必然です。

私たちが受け取っている情報は、誰かの「本音」ではなく、アルゴリズムが選んだ「勝ちパターン」である可能性がある。そのことを知っておくだけで、少し距離が取れる気がします。

5. 「希望の光」が、見えなくするものがある

一度「この人が変えてくれる」という臨場感の高い物語に没入すると、脳はコンフォートゾーン(心地よい現実として認識している領域)をその物語に合わせて再設定します。コンフォートゾーンの外にある情報——物語に都合の悪いデータや反論——は、ストレスの源として無意識に排除されるようになります。

これがスコトーマの深まりです。見えていないのではなく、見ると不快だから脳が自動的にシャットアウトしている。そしてRASがコンフォートゾーンを守るように機能し始め、支持する情報だけを選択的に拾い続けます。一度「この人は信頼できる」と感じると、その人に関するポジティブな情報だけが目に入り続け、懐疑的な情報はノイズとして弾かれていく。

物語の臨場感が高まるほど、スコトーマは深くなる。希望を持つことは大切です。でも、希望の強さとスコトーマの深さは比例する——そのことは、知っておいていい。

6. 武術の「合気」に似た構造

この仕組みは、武術の「合気」に似ていると私は思っています。達人は相手を力でねじ伏せません。相手が持つ「倒したい」「勝ちたい」というエネルギーをそのまま利用し、その方向をわずかに変えることで、相手を自分の勢いで投げ飛ばします。

選挙の情報戦も、同じ構造を持っています。「生活を変えたい」「今の閉塞感を打ち破りたい」という私たちの切実な願いを否定するのではなく、それをエネルギー源として使い、特定の方向へと転換していく。

私たちは騙されたのではない。自分自身の切実な願いという燃料によって、気づかないうちに加速していた——そう考えると、怒りより先に、少し哀しい気持ちになります。

7. 「自分の意志」を取り戻すために

では私たちは、物語にハックされる運命から逃れられないのでしょうか。

私はそうは思いません。ただ、必要なのは「感情を持たないこと」でも「情報を遮断すること」でもありません。

大切なのは、自分が今、何かに強く惹きつけられているとき、一瞬だけ立ち止まることです。

いま、私の中に湧いているこの気持ちは、本当に私自身のゴール(自分が心から望む未来)から来ているか。 それとも、誰かが設計した物語のセルフトークを、自分の声だと思って語っているだけではないか。

その問いを持てるかどうか。それだけで、情報との関係は変わります。

自分のゴールに基づいたセルフトークを持つとき、RASは本当に必要な情報を拾い始めます。スコトーマは消えないけれど、自分のゴールに向けて開かれていく。内部表現の主導権を自分が握っている状態、それが苫米地式でいう「エフィカシー(自己能力の自己評価)が高い状態」です。

高市首相には、ぜひ本物の支持——熱狂ではなく、自分のゴールから生まれた選択によって生まれた支持——で背中を押してほしいと思っています。それが本当の意味で、リーダーを強くすることだと信じるから。

自分の内部表現の主導権を、自分の手に持ち続けること。それが、情報に流される側から、自分の意志で世界を構築する側へととどまるための、唯一の道だと私は思っています。


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タグ: コーチングコンフォートゾーン苫米地式コーチング

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