本屋に行くと『上流○○、下流○○』というキーワードで煽った本や雑誌をたまに見かけます。
流行っているのでしょうか。
おそらくは、このまま何もしなければ『あなたは下流に落ちる』、そうならないために○○しなさいという行動等を煽りたいのだと推測します。
1.恐怖心を与えて不安を煽る
これは古典的なパターンです。「助かりたければ、ツボを買いなさい」と同じ仕組みです。
人間は自己が認識している外の世界を通じて、自己の内面を揺さぶられると秩序が失われます。この際に心理的な安定状態が揺らいでしまいます。
つまり、平穏な毎日が、突然恐怖に侵されてイレギュラーな状態となると不協和を感じます。
認知的不協和と呼ばれます。人間は、この不協和を解消しようと躍起になります。
余談ですが、高校生の頃に、毎日は平穏だったと感じていました。しかし、ある時他人から自分にとっての良くない噂を聞いた時に、自己評価が揺るがされ、ものすごく動揺したのを覚えています。
平穏である毎日が揺らがされたので、パニックになって一生懸命に頭の中で、観念の打ち消しという行動を行なっていました。そして、やがてその癖は強迫観念に繋がったのを覚えています。
この時に、こうすれば治ると知れば、エネルギーが生じて、あらゆる方法を試していたのを覚えています。
ともかく、心の内面の秩序が揺らいだ状況は、気持ちが悪い。一刻も早く元に戻ろうと切望します。無我夢中と言った方が良いでしょう。
この時に、これを使えば(買えば)治るよと言われればどうなるでしょうか。
人びとを動機づけ説得するために恐怖心を呼び起こそうとするのは、牧師や政治家だけではない。生命保険会社は、保険に加入させるために恐怖を使う。親は、娘が早くデートから帰ってくるように恐怖を使う。医者は自分が処方した医療処置を患者が守るように恐怖を使う。
アンソニー プラトカニス (著), エリオット アロンソン (著), 社会行動研究会 (翻訳)
プロパガンダ―広告・政治宣伝のからくりを見抜く 誠信書房 186p。
恐怖を与えた後に、この商品を買えば助かるという未来のイメージに植え付ければ成功です。
現在の私たちにとっての、そのほかに怖いものは?沢山ある。不安定な経済状態、失業、たまったままの借金。結婚相手や恋人から捨てられる不安、友達のいない孤独への不安、性的不能への不安、がんへの不安。
(・・・中略・・・)
行動科学者で企業コンサルタントのギャヴィン・ジョンストンによると、ブランドの多くは人類学の世界で「パラノイア式恐怖」と呼ばれる感情を利用するという。つまり、「抑制の効かない、どんな藁にもすがりたく状態」に消費者を追い込むのだ。
マーティン リンストローム (著), Martin Lindstrom (原著), 木村 博江 (翻訳)
『なぜ、それを買わずにはいられないのか―ブランド仕掛け人の告白』文藝春秋 55p。
繰り返しますが、藁をも掴む状態に追い込むには、まずは恐怖や不安を与えること。
マーケティングの世界で、『ドリルを売るには穴を売れ』と言われますが、不安という穴を掘る必要があるのです。
『下流に落ちる』は、目に留めた人の恐怖心を煽り、一瞬でも悲惨なイメージを発火させることに狙いがあります。
2.誰が何のためにつくった言葉?
オリジナルは、どこかの先生が定義したのかもしれません。しかし実際のところは、マーケティング用語として転用されています。
では、言葉はどのようにしてその力、すなわち人びとに影響を与え説得する力を獲得するのだろうか。簡単にいえば、対象がどのように記述されるか、一連の行為がどのように提示されるかによって、われわれの思考や、コミュニケーションに関する認知的反応が方向づけられる。われわれは、対象や事象を記述するために使うラベルによって、われわれのメッセージの受け手が状況に関するわれわれの定義を受け入れるようにそれを定義することができる。そして、それによって、受け手はわれわれが説得を始める前に既に説得されているのである。
アンソニー プラトカニス (著), エリオット アロンソン (著), 社会行動研究会 (翻訳)
プロパガンダ―広告・政治宣伝のからくりを見抜く 誠信書房 51p。
つまり、日本に住む人は、多かれ少なかれ先の見えない未来に対して、閉塞感を覚えています。
毎日繰り返される、不安の報道により、潜在的に心も不安定な状況にあります。
この状況下で『下流』という用語を拡散すれば、拡散する側の人が、される側の世界に対する認識をコントロールすることも可能だと考えます。
この説明をさらに簡単にすれば、ある価値観を意図的に流し、人々をそれに一喜一憂させることが可能ということです。
冷静に考えたらエゲツないです。しかし、別に従わなければならない義務はありません。
だけどそれでも『下流になるのが怖い』
このように恐怖を感じたとすれば、その記事を書いた人間が囚われているのでしょう。
一つの指標として、書き手が恐怖に対して強い臨場感を覚えているので、そのような生々しい記事が書けるのです。それが非言語で読み手に伝播するのです。
でもって、表紙に対処法やその脱却法と示しておけば、読み手は気になりページを開きます。
そして、そのページにある程度、宣伝と分からないように、あたかも価値があるかもという情報をそっと仕込んでおきます。
外貨を購入したり、外国のどこかに共同で土地購入したりでしょうか。もしかしたらNISA「少額投資非課税資制度」かもしれません。
メルマガ登録への誘導かもしれません。
実施にタイトルが気になってクリックした人もいるでしょう。
ともかく読み手に藁(イメージ)を見せるのです。
多くの人が、無意識のうちに今の生活に不満を感じているので、藁を掴めば未来が待っているという幻想を抱きます。
情報に振り回されないためには
まず自分自身で生き方を確立すること。
その手段として、手っ取り早い方法がゴール設定を推奨します。
と言って、ココでコーチングを良く見せようという魂胆だろうと思われるかもしれません。
しかし、ゴール設定であれば、最初は他人の価値観に左右されるでしょうが、やがて自分が望む未来をイメージします。
要するに、自分が主体の未来イメージです。上の例は、他人が主体の未来イメージです。
あくまでも鍵は自分が握るというスタンスです。
自分が主体だから結果に責任が取れるし、望めるのです。
それに必要な情報(Information)や人脈を集めていく。むしろゴールに相応しい情報や人脈が集まってくるでしょう。
それらを自分なりに料理して、人生に役立てていく。
この活動をIntelligence と呼びます。
Intelligence とは、私のブログなどにたまに出てくる概念ですが、
簡単に言えば、主に国家がその存亡のための、必要な情報を取捨選択して、分析して作戦行動に活かすための活動です。
言い換えれば、主に国家のゴール達成のために、必要な情報を取捨選択して、分析して作戦行動に活かすための活動です。
国家は人の塊なので、この技術を個人単位に落とし込まない手はありまえん。別に国家の専売特許ではありません。
※とくに国家機関等で体系的にこの概念を押さえたわけではありません。
自分らしく生きていきたいというのならば、私たちの人生に必要な情報を取捨選択する力、Intelligence能力を身に付ける事が大切です。
コーチングとも親和性は高く、「誰の言葉を受け入れるのか?」もIntelligence Activity(活動) に類型されると考えます。
受け入れた言葉が私たちにとっての真実に成り得ます。
なので、ドリームキラーから発せられる言葉には、注意しなければなりません。
普段目にする、耳にする情報にも注意を払い、真実として取り込むためには取捨選択が必要であるということです。
より良く生きるためには、世界は自分が創るという主体的な姿勢を崩してはならないのです。
まとめ
恐怖や不安は人が操られやすくなる
ゴール設定からもたらされる情報(Information)や人脈の取捨選択、Intelligenceが重要