イメージを共有する、いやさせる


先日、最近知り合った女性に抽象度についてレクチャーする機会がありました。

 

 

 

 

 

その女性に分かりやすいように、彼女の実家がある京都に関連して抽象度を説明しました。最近、京都から松江に引っ越してきてきたそうです。

 

その女性は京都市の中心部、いわゆる洛中ではなく郊外(洛外)の出身だそうです。一昨年、ベストセラーになった『京都ぎらい』を著した井上章一氏によると中心部、いわゆる洛中以外は正式には京都でないと見做されているとのことです。洛外出身の井上氏はそこにある種のワンランク下感を覚えており洛中、洛外には見えない壁があるのだと指摘します。同じよう、洛外出身のその女性にも、似たような思いがあるようでした。

 

しかし、洛中でも洛外でも抽象度を上げれば京都市民です。さらに、かつて私がいたこともある舞鶴市を含めれば京都府民です。さらに、舞鶴市にそびえる青葉山を超えれば、そこは滋賀県であり、近畿地方となります。なので、大きな視点で見れば洛中、洛外にこだわっても仕方がない、これが抽象度と説明しました。

 

 

とまあ、これは抽象度についての一般的な説明です。

 

 

 

 

その女性の質問としては、『視点を上げることの重要性は分かった。でも、それ以外に抽象度が役立つシーンはないのか?』とのことでした。

 

 

じつは抽象度は説得交渉にも役立ちます。

 

 

 

その女性はあるコーヒー屋さんで働くようになったそうです。コーヒー屋さんは文字通り、コーヒーを仕出しする店であり、そこで出されるフードも通常はコーヒーにマッチするものです。

 

 

 

 

さて、その女性が働くお店で、彼女が『小倉トースト』を提供したいと思ったとしましょう。という例えば話です。

 

提供するためには店長の許可が必要です。つまり、店長を心変わりさせなければなりません。

 

 

 

 

しかし、『小倉トースト』を作りたいです提案しても、焙煎技師(ロースター)としてのこだわりがある店長は、簡単には『うん』とは頷かないでしょう。

 

焙煎技師は職人です。そこの店長は、どうかは分かりませんが、大概、職人=頑固の図式が成り立ちます。

 

 

 

 

ここで役立つのが抽象度です。

 

まずは抽象度を上げて、店長の心理状況を俯瞰して観るのです。

 

なぜ、店長は『イエス』と言わないのか?

 

 

 

 

理由

面倒くさいからです()のっけから『それを言ったらおしまいよ』的な理由ですが、人間、変化にはエネルギーを要します。エネルギーを使うことは、生物としてのデメリットです。だから、現状維持したい。

 

だとすると、相手のデメリットを無くす提案をすればいいわけです。企画、開発からオペレーションまで、彼女が考えて実行すればいいわけです。

 

また『恒常的なメニューではなく、季節限定のメニューにする』と、最初はあくまでも一時的なものであると強調します。理由は、大きな変化は店長の無意識が反発しますが、小さな変化だと反発を小さくできるからです。

 

 

 

 

 

理由

デメリットに対する報酬(メリット)を伝えます。デメリットを凌駕するメリットです。人間は面倒なことをリスクと捉えて、極力それを排したいと考えますが、一方でそれを凌駕するメリットを伝えれば動きます。理由は、脳内物質であるドーパミンが流れるからです。このドーパミンは運動(行動)を促します。

 

 

 

相手のゴールやwant toに合致したことがメリットになります。もちろん、そのためには、日ごろから店長の思考パターンを洗っておく必要があります。そのためには、抽象度を上げて、相手の視点で物事を考えるようにすることが大切です。

 

 

 

 

 

これにもとづけば、例えば、小倉トーストを導入することにより女性の客層が増える、女性は口コミで紹介するからさらにお客さんが増える。そうすれば当然売上も増える。店長は経営者ですから当然売上を伸ばしたいハズです。

 

 

 

さらに、抽象度を上げれば、松江市に収める税収が増えて地域貢献にもなると説きます。松江市民は地元へのこだわりが強い人種です。ここを押さえます。また店長の思考を、この抽象度にまで引上げることができれば、店長の脳からドーパミンが放出されて、それが前頭前野に達します。抽象度が上がるとは、ドーパミンが放出されることでもあります。また、ドーパミンは先ほど述べたように運動も司るホルモンなので、行動したくなります。

 

 

 

 

また、彼女は店長に、『そんな組織で働ける従業員のやりがいにも繋がり、組織のエフィカシーが高まり、さらに生産性が高まって売り上げが上がり、地域貢献もできる』と伝えると効果は倍増です。

 

 

 

 

 

 

理由

店長は焙煎技師なので職人です。先ほど書きましたが職人は大概、頑固です()が、一方で職人は本能的に自分を高めたいと思う生き物です。そこを突くわけです。

 

 

小倉トーストとコーヒーの相性(ペアリング)という視点から攻めます。小倉トーストを提供することで、今まで見えていなかった(スコトーマに隠れた)新たな発見があるかもしれない。

 

 

『大切なのは、コーヒー業界の誰もが未だに気がついていない問題を発見することであり、それができるのは私たちしかいない!そのためにここで小倉トーストを提供することは、まだ誰もが気がついていない世界に足を踏み入れる一歩であり、意義がある』と力説します。

 

 

きっと店長の琴線に触れることでしょう。

 

 

 

 

このを絡めながら、店長に未来をイメージさせます。もちろん、そのためには説得する側が未来をイメージできなければならないことは言うまでもありません。お互いにイメージを共有する必要があります。

 

 

 

 

 

しかし、イメージを共有しただけでは足りません。相手の臨場感に落とす必要があります。抽象度は運用してナンボです。それは実際に小倉トーストと、それに合うコーヒーを店長に飲食させることです。ここまでくれば『イエス』を引き出す可能性は高くなります。

 

 

 

という例えを、即興で考えながら女性の臨場感に落としたら、抽象度の意義を納得してくれました。

 

 

 

 

 ※とは言え、そのお店、かつてはカレーもあったようなので、店長もキット柔軟に対応してくれることでしょう

 

 

 

 


2018-09-04 | Posted in 女子専用, 抽象度No Comments » 

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